ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

歩み続けたことで得た包容力。BUMP OF CHICKEN「aurora arc」

 

 

どういうわけか、アルバムが出ると聞いても受け取り方が分からなかった。

バンプは、あまりにも大きくなりずっと戸惑っていた。初期〜中期のバンプと違うから聴かないとかそんな野暮な話ではなく、むしろ新曲は着実に進化していて感心していた。けれどもその大きさ故に直視が出来ず、俯瞰するようになっていた。

 

そんな微妙な感じで迎えた発売日。ライブラリに追加する瞬間に、昔のような高揚感をやっと思い出した。

一曲目から三曲目を聴いたとき、懐かしくて嬉しい感じ、温もりと少しの冷たさ、その他様々な気持ちを思い出した。自分の血肉となってしまったバンプは未だ存在し、興味を失いかけてた自分をも包み込んでくれた。

 

オーロラの音

「オーロラ」という単語をみたときに流れる音楽。クリアで、少しキラキラして、エコーがどこまでも伸びていくようなサウンド。なぜそんなイメージになったかは分からないが、1曲目「aurora ark」と3曲目「Aurora」ではそのイメージにぴったりとハマる音が流れる。

 


BUMP OF CHICKEN「Aurora」

「Aurora」で頻出する「クレヨン」という固有名詞が、この曲の視点をグッと下げてくれている。日本人には(というか全人類の99%くらいには)縁がないオーロラを、遠くにある神秘的なものから自分で描くことで手に届くものであるように感じさせる。本物を見に行くための物語なのかな、とも思っている。

 

思い出の覗き穴


BUMP OF CHICKEN「記念撮影」リリックビデオ

4曲目「記念撮影」の、少しザラザラとした言葉の質感は少しやられてしまう。音楽はややクリアで輪郭がはっきりしているのに、歌詞は高感度のフィルムのようだ。良い思い出だけでなく、悪い思い出にも入り込むような情景描写で正直つらい。にも関わらず何度も聴いてしまうし、アルバム内でも特に好きだったりする。歌詞の起承転結で救いがやや少ないのが等身大な印象で、リアリティを補強している。

 

5曲目「ジャングルジム」は、一番最初は聴き流してしまったが、後日改めて聴いて心底驚いた。藤くんが時おり見せる凄まじい切れ味を、アコギ一本で示してきた。「記念撮影」が思い出の傷口に塩を塗るのに対し、「ジャングルジム」では今の自分に冷や水を浴びせされているようだ。

 


BUMP OF CHICKEN「リボン」

6曲目「リボン」。ファンサービスと言えばそれまでだが、今までの物語を振り返り、認めてくれるこの一曲の意味、意義は大きい。出会って、ずっと聴き続けてきた人たちも自分たちの過去も決して忘れずに持っていってくれる決意表明に心を撃たれた。

 

現在地からの温もりと愛

「アンサー」はMVの印象がどうしても強すぎるけれど(「三月のライオン」いいよね)、歌詞のストレートさと熱量は作品中でも抜きん出ている。実直なメッセージで聴き手の手首を掴んで引っ張ってくれるような世界観は心地良い。

 

アルバム後半の程よい位置に配置された「Spica」は小さな曲だが、優しさや温もりを感じさせる。サウンドも面白く、ピカピカしていがらどことなくレトロなエフェクトが入ってきて、少し前の世界から届いたようなイメージを想起させてくれる。

最後の『いってきます』から、「新世界」に繋がる流れはややベタかもしれないけど、しっかりとハートを掴んでいった。

 

今作のリード楽曲と言って差し支えない、「新世界」。こんなストレートに『アイラブユー』なんて言うなんて…しかもただのI love you.じゃなくて『ベイビーアイラブユーだぜ』って。

バンプ楽曲における二人称は恋人っぽいが、明確に示していないのが特徴であると思っているのだが、「新世界」ではそれをハッキリと示している。それがとても新鮮だし、ここまで思い切った曲が出てくるとは思いもしなかった。それをとてもポップなサウンドで歌い上げるのだ。シングルで出てきたら「バンプ、どうした…」となりかねない…というか絶対なる曲だが、アルバムに取り入れることで世界観を象徴する楽曲として提示されている。やられた。

でもポップなバンプもいいね。『ベイビーアイラブユーだぜ』って26歳にもなって口ずさんじゃう。

 

バンプの真骨頂は隠しトラッ…、アルバムの最後の曲にあると思う。

「流れ星の正体」は、そんなイメージを裏切らない楽曲だった。距離や時間を示し、それを超えてくれるものの存在と正体を優しく示してくれる。

 


BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」

最後の大サビの歌詞。俯瞰していた自分をも見つけてくれたようだ。時間なんて関係ないと歌ってくれる。いつの間にこんな包容力のあるバンドになっていたのだろう。

 

揺るぎない童話的な言葉たち

久しぶりに聴いたバンプで安心したのは、独特な言葉たちのおかげだろ。

例えば最新の涙が いきなり隣で流れたとしても

(ジャングルジム)

絶望の最果て 希望の底

(シリウス)

頭良くないけれど 天才なのかもしれないよ

(新世界)

比喩表現としても、なかなか繋がらないワード同士を面白く繋げるセンスは健在である。一見いびつな組み合わせは、これらに続く歌詞で補完されることも多く、耳を傾けるきっかけにもなる。この効果的な手法は今後もぶれずに続けて欲しいと願う。

 

 

サウンドで言えば、前作や前々作のほうが意欲的であった感じは否めない。ただ、メッセージ性であるとか、楽曲のMVであるとか、一曲一曲が大作過ぎてアルバムに落とし込むのは非常に困難であっただろう。そんな状況ではあったがコンセプトの力も得て、丁寧にまとまっていた。一通り聴き終わったあとの充足感は、きちんとアルバムのそれであった。

 

東京が滅んだら、音楽の首都は札幌に移ればいい。サカナクション「834.194」

 

ストーリーの時代の申し子になってしまった

 2013年ごろに使われていた(ような)「付加価値」という概念は、今ではそれ自体に付加価値を加えて「ストーリー」という概念で消費をされるようになった。

札幌と東京、直線距離で800km以上ある二つの大都市で感じたことー札幌に対する郷愁と東京で向かい合った複雑な想いーをコンセプトに、バンドの軌跡を示したような2枚組。ストーリー性を持たせたことを包み隠さず、むしろ一層押し出した作品が2019年に出たことは偶然だろうか。

 望郷からはじまる東京の音

シングルでリリースされる楽曲はダサい部分が5%くらい必ずある。これはJ-POPであることを示すためのアレンジであると認識していたが、そろそろ(と言って5年以上経ったが)アルバム曲の洗練された音を聴きたくて仕方なかった。その願望を1枚目1曲目「忘れられないの」がいきなり叶えてくれた。

願いを叶えただけでなく、アルバムの提示する価値観、ともすればバンドが最初から語っている価値観を1曲目にして80%以上提示してきた。この価値観は、後半そして終盤で更に展開される。

続いて「マッチとピーナッツ」は、懐かしいJ-POPの匂いがするサウンドにのせてオルタナティブな歌がテンポ良く流れる。すごく懐かしい感じがするんだけど、これが何なのかは未だ分からない…。

1枚目3曲目からは「陽炎」、「多分、風。」、「新宝島」と、アップチューンのシングル曲が続く。ベスト盤も尻尾を巻いて逃げ出すような並びであるが、不思議とおさまりが良い。絶妙なバランスで成り立っているが、1枚目の世界観を表現するためにはこの並びでなければならないと気付くのは2枚目に入ってからだ。

ダサい部分を5%どころか50%ぐらい出してきてずっこけてしまったのは「モス」。いや、ほんまにいつの時代の曲やねん、と苦笑いしていた。歌詞はその古風なサウンドと対照的に、バンドの最近の(NFを始めた頃からだろうか)価値観を示してくる。結構計算高いな。

「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」、「ユリイカ(Shotaro Aoyama Remix)」、「セプテンバー ー東京 versionー」は組曲のように連なっている。東京で感じてきたことがヒリヒリと肌を刺す。決して明るいわけでも希望があるわけでもない。かと言って、絶望して自暴自棄になっているのとは違う。

あの土地にいるからこそ洗練された音楽が、少しずつ故郷へと戻っていく。得たものを捨てることなく、故郷を出た頃とは違う持ち物を抱えながら。そのような光景が浮かび、胸が苦しくなる。

 

 東京からはじまる、望郷の音

2枚目1曲目の「グッドバイ」。安直な発想では東京と別れを告げる、といったところだろうか。それは雑だとしても、ここがアルバムの分水嶺となり、シングル曲の並びも別れや苦しみ、望郷などやや後ろ向きなテーマのものが並ぶ。歌詞カードのアートワークがガラッと変わるのも印象的だ。

「蓮の花」、「ユリイカ」とこちらもシングル曲が並ぶが、1枚目の三連続とは全く意味合いが違う。感じられたのは、迷いや戸惑いだった。

「ナイロンの糸」は、もっとはっきりと迷い、戸惑いを示す。それに加え、後悔も歌う。中盤で入ってくる管の音が船の汽笛のように寂しく響く。

蝉時雨をバックに歌われる「茶柱」は、この作品での底だろう。もはや後悔しか歌われず、それを縁起物であるはずの茶柱をテーマにしているのだ。

 

底まで落ちたらあとは上がるしかない。「ワンダーランド」は明るいサウンドが程よいビートで進行していく。バンドサウンドを前面に出した曲は久しぶりで、初期〜中期の作風を彷彿させる。数曲ぶりに前向きな歌詞が歌われる。が、それも最後にはノイズに飲み込まれ、ひと時の希望だったと感じさせる。

「さよならはエモーション」は、前曲で示された世界から現実に戻ってきた感覚が強く、何度も聴いたはずの曲なのに全く異なって聴こえる。胸に迫るものがより強い。

 

アルバムの核となるインスト曲「834.194」。どうジャンルをつければいいか分からないが、ジャケットのイメージと結びつくサウンド、音のうねりを包むように優しく重なり合う様々な音。変化に富みながら時おり覗かせるある音が、どういうわけか距離や時間などを想起させる。この曲はタイムマシンであり、乗り物なのかもしれない。

 

アルバムのラストトラック「セプテンバー ー札幌 versionー」。

東京versionと同じ曲なのに、憑き物が落ちたかのように、クリアに聞こえてくる。楽器が少ないとか、マスタリングが違うとかでは(多分)ないのに、東京のそれより丁寧に、はっきり歌われているように聴こえる。

 

音は確かに変わった。けれど言葉の根底にあるものは変わることがなかった。そんな物語を二つの「セプテンバー」が示している。800km以上の距離と、10年以上の時を経ても。

 ストーリーを認め、誘(いざな)ってくれるアルバム

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カッコ悪い名前のバンドが出てきたなと思ったのが10年前。

地元を離れる直前、mixiの日記に「ルーキー」の歌詞を引用したのは8年前。

RSRのステージでゴリゴリのアレンジをしてオーディエンスを置いてけぼりにした光景を見たのが5年前。

NFに行き、ヘロヘロになってリキッドルームを出た時に未だ夜が続いてるのが歌のそれと一緒だなと感動したのが2年前。

 

自分のストーリーにも重ねたくなるように、それも(オールオッケーとは言ってくれないだろうが)黙認してくれるようなコンセプト。寄り添ってはくれないが、寄ってくる者は拒まない。過去を直視させた上で、それらを肯定してくれるような優しさを感じた。

 

 

6年間、待った甲斐があった。

GRAPEVINE「イデアの水槽」

 

イデアの水槽

イデアの水槽

 邦楽オルタナティブロックにおけるマイルストーンと勝手に位置付けている。

鬱々とした感情、垣間見える生活、飢え、些細なものへの苛立ち。

アルバムを通して聴いたあとに浮かんだイメージ達だ。日常のフラストレーションと喜びが絶妙に組み合わさっている。サウンドの重みがそれらを引き立てる。

 

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普遍的な音の楽しみと喜び くるり「ソングライン」

 

 この作品は、万人ウケするようなイカした作品ではないと思っている。キラーチューンがあるわけでもなく、大きなタイアップもない。ミュージシャンとのコラボもないし、インパクトは薄い作品だ。

では駄作かと言えば、そんなことはない。(実際には難産だったとしても)気の合う仲間で作ったような気軽な雰囲気、その裏ではロジカルに組み立てられたメロディが流れる。音の楽しみ、歌の楽しみを存分に感じられ、つくりの丁寧さが楽しさの説得力を増している。

前作「THE PIRE」のサウンドは実験的とでも言うべきか、異質な音を含む曲が連なる作品だった。これでもかというほどに様々な楽器を用いて、聴き手を混乱させる。一方でポップな楽曲も多く上手くバランスが取れていて、全体を通してエンタメ性の強い作品だった。それと比べると今作は作品の性質が大きく異なっているため、面食らってしまうのは致し方ないだろう。

歌を活かす

アルバムタイトルにソングが入る通り、今作では歌に注力した作品になっている。

日本語詞の味わいは、はっぴいえんどのそれを彷彿とさせる。優しい言葉で描き出す情景、人の温もりに触れた瞬間の感情、別れの直前の寂しさと再会への祈り。書ききれないほどのシーンを歌い上げる。近年の作品に見られる傾向だが、強い言葉を使っていないことにも気付く。歌が心地よく聴こえるのも、これが理由の一つであろう。

時代の花を すべからく集めて

残り僅かと 急ぐ景色を尻目に

(風は野を越え)

急行の止まらない駅でずっと

この道は 桜散るのもの早く

昼下がり 春霞 蜃気楼

未だ逢えぬ いつからか 涙の数かぞえて

(春を待つ)

いつの間にか流星が 願いごとを叶えて

あの時はありがとうと 素直に言えるまで

(忘れないように)

歌のための音

これらの歌を支えるのは、前衛さを今回はやや控えめにした音楽である。時期としては、交響曲第1番に取り組んだ後になる。楽器の使い方が全く変わっている。今までがダメというわけでは全くないが、一つ一つの音にこれまで以上に意味を持つようになり、音数としては多くないはずだが非常に豊かな音楽になっている。管弦楽オケで弾く交響曲のようなオーケストレーションをバンドのアンサンブルまできちんと落とし込んでいる。楽器的にはオケと関連性を見出せないように思うギターの音にも、こだわりが溢れている。 

 

唯一、これらの例外と言える、避けては通れない楽曲が「Tokyo OP」だ。

くるり - Tokyo OP /Quruli - Tokyo OP - YouTube

MV難しすぎ…

前々作「坩堝の電圧」、前作「THE PIRE」の流れを組むファンキーさでかっ飛ばしているインスト曲。

ギターのグリッサンド音まで聴き込んでしまう濃厚な作りや、強烈なビートに乗せて粘り強く展開されるソロ回し、人を食ったようなオルガンの音と聴きどころが存分に散りばめられている。

謡曲のオムニバス的なアルバム

ロックバンドのアルバムというよりも、普遍的な歌謡曲であり、ちょっとしたオムニバスアルバムという印象である。誰が聴いても心地の良い、そして意味のある作品だ。片方ができているものは非常に多いが、両方を達成するのは貴重だと思われる。一回聴いただけで「駄作だ」と決めつけず、何度も聴いていただきたい。

 

何となくだけど、以前より歌詞に鉄道出てくる割合がめちゃ増えてる気がする。

所詮 君は 独りぼっちじゃないでしょう

生きて 死ねば それで終わりじゃないでしょう

(ソングライン)

「ソングライン」で、ラヴェルの「ボレロ」のフレーズが入るところがお気に入り。

 

音楽の喜び、歌の喜びに溢れた一作。

怒らないからアジカンの「N.G.S」をナンバガの曲と早とちりした人は手を挙げなさい NUMBER GIRL「SAPPUKEI」

‎ナンバーガールの「SAPPUKEI 15th Anniversary Edition」をApple Musicで

今年のR.S.Rのポスター、

見間違いかと思ったよね。誰かがイタズラで書いたのがそのままアップされたのかと。

でもアカウントできてるし、

NUMBER GIRL、再結成。向井秀徳「またヤツらとナンバーガールを」 (2019/02/15) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

コメントまで出ている。このコメントがあまりにも信頼性が高くてとりあえず信じることにした。金と酒が書かれていたのなら信じるしかないよね。

Twitterのアカウント取得日が2018年4月とからしいけど、これはエイプリルフールでも狙っていたのか、それともどこかのタイミングで密かに狙っていたのか。

何年か前のギターマガジンで向井秀徳田渕ひさ子が対談しているのを見たときは本当にびっくりした。

 

とりあえず金貯めなきゃ。タイムマシンを買うより遥かに安いんだ。

誰のものでもない音楽

人生で初めて聴いたナンバーガールのアルバムが「SAPPUKEI」。確か2008年で、とっくに解散していた。古いレイルマガジンを読んでいたら、連載を持ってたくるり岸田氏がこれを取り上げていた記憶がある。これ読んでナンバガ聴きはじめた鉄オタキッズは流石にいないと思うがどうなんだろう。

変な、とても変なバンドだと思った。一曲目から置いていかれた。カウントが「論客用無し」ってなんなんだよ。

意味は全く分からなかった。しかし耳から離れない。断トツで耳に残ったのはギターのカッティング。00年代後半の邦楽ロックに傾倒していた自分には、ギターは軽やか、爽やかな音というイメージしかなかった。キャッチャーさが無い、音像が濁っているこの音は何なんだ。次は歌詞。意味不明。何を表現しているか分からない。強い言葉や学校の授業でしか聞かないような単語が並び、カオスな光景が頭の中で広がっていく。

俺は3号線を狂う目から可笑しいに向かって北上。

(URBAN GUITAR SAYONARA)

とりあえず、ここで福岡のバンドってことはわかった。

答えを一切示さない歌詞もインパクトがあった。

俺を弁護するヤツがいない

その自尊心との戦いは

いつまで続く?

(SAPPUKEI)

禅問答ばかりの歌詞は、耳障りの良いポップスばかり聴いていた人間には全くやさしくない。

 

よく言われていることで恐縮だが、他のバンドと全く異なっていたのは、ひたすら自分のことを表現していたことだ。それも恋愛とか家族とかではなく、ただひたすら自分の心情、出来事を語っている。別に答えはないし、有り体に言えば誰得なもののはずだ。それでも支持されたことは、もしかしたら期間限定な恋だの愛だのよりも、おはようからおやすみまで付いて回る心情が表現される方が(嫌な言い方になるけど)需要があったということだろう。

 

冷凍都市とは

アルバム内でナンバーガールの気持ち悪さと音楽のカリスマ的センス、詩人としての向井秀徳を示してくれたのは、8曲目「U-REI」だった。

全パートが掻き鳴らすノイジーなイントロから、変拍子的に刻んでくるギターは、アルバム内でも存在感が際立っている。

部分赤。出た!この赫…全くもって赤い

赤しか言っていない、それ故にこべり付く印象。東京のこととかをどうやら歌ってるらしい。

この曲もカオスな感じで突き進むと思われたところで、状況が一変する。

憂ってる 街にとまって

目立ってる 赫い夕暮れ

気取ってる りりしい顔で

憂ってる 街にとまって

突如、叙情的な歌詞がはじまり、断片的な情報しかなかったものが、ここで一本の線となる。

東京の印象、生き抜くための意地、ふとした瞬間に心を抜ける風、これらが歌い上げられる。

今も言い続けている冷凍都市という言葉の源流はこの曲にあると思う。野暮だから解説は避ける。面白いのは、各々で印象が違うし、そもそも皆が上京するわけではないのに、冷凍都市という単語で同じようなものをイメージできることだ。共通認識をうまく活かした表現である。

Number Girl Syndrome

邦ロックバンド、ナンバーガールの影響を受けない方が難しい件 | NIGHTCAP

言いたいことはこの記事に書いてあるんだけど、このアルバムと「サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態」を聴いてから、当時の邦ロックが全部ナンバーガールのパクリに聴こえる病気にかかった。当時の面々を思い出すと、影響受けてないバンドなんて皆無だったから。

ただし、個人的にはこれを感じたのはサウンド面が大多数である。ここまでストイックに内面を掘り下げるバンドはなかなか多くない。

また未来が読めなくなった!!

2010年代前半に入るとエルレの影響を受けたバンドがたくさん出てきて、最近はそれもひと段落して新鮮な音がたくさん出てきたように個人的には思う。骨太なロックはシーンでは聴けないからちょっと探さなきゃいけないけど。

しかし、そのトレンドを作った張本人たちが帰ってきたからさぁ大変。これを期に聴いたロック少年達がどんな音を作り出すようになるか。アラサー世代好みの音楽が5年後ぐらいにリバイバルするかもしれない。

 

福岡市博多区ではじまり、サッポロで終わったバンドが、石狩で蘇る。これだけで最強のストーリーだ。それでも未だに信じられない。真偽を確かめるにはやはり現場に立ち会うしかない。

2018年まとめ

あけましておめでとうございます。今年こそきちんと更新するぞ。

ツイッターでざっくりまとめた総まとめを転記。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これより下は、ツイッターでまとめきれなかったものを小出しに。

サカナクション「陽炎」

‎サカナクションの"陽炎 -movie version-"をApple Musicで

イントロがダサくて笑ってしまった。一昔前の中華料理が出てくるときの音やん。

コーラスがはじまると一気にかっこいい。歌いやすくてノリやすい。歌詞は文学寄り。

アルバム、まだかなぁ…。

 

◯とけた電球「STAY REMEMBER -EP」

‎とけた電球の「STAY REMEMBER - EP」をApple Musicで

2018年特別枠。吹田で同じ舞台に立った仲間だ(多分)。最近はシティポップに傾倒していたから久しぶりにポップなバンドを聴いた。音は軽い気もするけどメリハリがあって意外と聴きやすい。サウンドにこだわり強め?歌詞はもうちょっとかな…深みがあると更に楽しいかも。今年も楽しみ。

 

◯Los Unidades「E-Lo」

‎Various Artistsの"E-Lo (feat. Jozzy)"をApple Musicで

な、なんなんだこのバンドはー(棒)

Coldplayでは見られない一面が垣間見える。特に最近は壮大なサウンド、世界観を求められている節があるから(もちろん好きだけど)、このややダークな感じはかえってのびのびとしていていいなーと思う。

 

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」

‎ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ホームタウン」をApple Musicで

うん、名盤。

「マジックディスク」以降…もっと言えば、震災以降のアジカン軸がぶれている感じで、解散も覚悟していたけど、「Wonder Future」で劇的な復活を果たしてからは今までのように、もしかしたらそれ以上に新譜を楽しみにしている。

「ホームタウン」では、軸がぶれていたと感じていた時期までも全肯定、昇華している。音楽の多様性、楽しみ方を提示している。自分の視野の狭さを恥じてしまう。

 

◯ゴーゴーペンギン「A Humdrum Star」

‎ゴーゴー・ペンギンの「A Humdrum Star (Deluxe)」をApple Musicで

可愛い名前やなーと思って近寄ったペンギンに、羽根でガツンと頭を叩かれた。

救いようのないくらい暗い音楽を巧みに奏でている。特にピアノが冷たい。氷で出来ているんじゃないか?カテゴリは分からないんだけど、空気感はジャズのそれだなと確かに思った。ウッドベースがかっこよすぎる。

 

 

もっと書きたかったけど、とりあえずこのくらいで。これ以上書くと普段のレビューに支障をきたしそう 笑

今年も良い音楽と出会えますように。出会えるよう頑張れますように。

UKとJapanの最適解 Newspeak「What we wanted」

Newspeak - What We Wanted (Official Music Video) - YouTube

 

すごいのが出てきたぞ。

 

英語詞だが、世界観は日本人のそれであるのが面白い。直喩が中心の、私小説みたいなストーリーは最近の潮流に乗っかっている。サウンド的にも、来歴的にも洋楽っぽさが強いけれどこれは邦楽ロックだと実感させられる。

 

演奏が上手い。サウンドメイクがドン引きするぐらい良質だ。

淡々としているように感じるボーカルは線の細さはあるが、それを補う高音域の伸びが強い武器となっていて心地よい。抑揚もきちんとある。

キーボードがこれだけ主張するバンドはちょっと珍しめかも?と思いつつ聴いているとテーマの取り入れ方、歌わせ方が絶妙。常に鳴っているわけではないのにバンドのメロディの根幹を果たしている。

持ち味の多さに驚かされたのはドラム。トリッキーな入り、変幻自在のパターン、でも引くところは引ける楽曲の把握能力。ジャンルをちょっと越えた音楽性の広さを感じさせ、ワクワクする。踊れる音楽として作っている立役者だ。

一方で、ギターの表現力が終始物足りないこと、ベースの立ち位置がフワフワしていることがやや気になる。特にギターはキーボードとのバランスが取りきれていないのかな?という印象だ。もっと主張するなりキーボードとの掛け合いを見せてくれると更に楽しくなる。

 

第一印象は、ジャンルをちょっと超えた音楽であると感じた。ロックとEDM、あるいはジャズ、フュージョンなどの音楽性と、日本とイギリスといったバックグラウンドと、多くの要素を持ち合わせている。邦楽ロックの血液が圧倒的に濃いのだが、様々な要素が垣間見えることで、ジャンルを少し超えたように受け止めることができる。それ故に踊れたり、歌えたりする。決して主張し過ぎない今のスタイルが本当に良いと思うので、これを大切に育てて欲しい。

 

まだアルバムを出していないというのでまた驚いた。ポテンシャルを秘め過ぎている。(8月に書いたのでそのままだった…本日アルバムリリース!!)

youtubeの再生数もまだ伸び悩んでいるようだが、はやく多くの人に聴いてもらいたくて仕方ない。