ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

「orbital period」(BUMP OF CHICKEN)

中学生の頃にやっていたブログは、記事タイトルを曲名とし(これは今も続いている)、冒頭でその曲のレビューを書いていた。当時の友人たちからは賛否両論あったが、毎日更新していたこと、それだけ音楽を自分なりに解釈していたことは今思えば結構すごいと感じている。

 

大学四回生の終わりとなり、あと二ヶ月もすれば社会人となるタイミングでこれを作ろうと思ったのは、中学生の頃より語彙も聴いた音楽の数も増えた今、どれだけ音楽と向き合えるかを確かめてみたいと思ったからである。

 

 

 

最初に書いてみるのは、きのう結成20周年ライブを行ったBUMP OF CHICKENの「orbital period」である。それこそ中学生の頃に発表され、発売をとにかく楽しみにしていた作品である。後にも先にも新作を楽しみにした経験はこれっきりである。発売から8年が経ったが、今も定期的に聴き返すアルバムである。

 

1曲目の「voyager」から17曲目の「flyby」まで、歌詞、音楽ともに全曲を通して一連の物語が出来上がっている。バンプのアルバムでは他のバンドよりも物語性が捉えやすいと思っているが、前作「ユグドラシル」や後作「COSMONAUT」よりもまとまりが良い印象である。7曲目「ハンマーソングと痛みの塔」から10曲目「花の名」までは中弛みをしている感はあるが、弛緩しきっているわけではないのがこの作品の強みである。特に9曲目「かさぶたぶたぶ」のキャッチーでややコミカルなメロディと、可愛らしいだけではない歌詞が、気の抜けた耳に突き刺さってくる。前後作ではアルバム単位で聴くと飽きてしまうのと比較すると、その弛みもきちんと考慮されているように感じる。

2曲目「星の鳥」から6曲目「supernova」、11曲目「ひとりごと」から16曲目「涙のふるさと」までの緩急の付け方は絶妙である。きれいな山を描くグラフのように楽曲が続き、心の盛り上がりとヒートダウンまで気持ちよく体感できる。ためらいなく音楽を楽しめ、歌詞を聴いて深めることができる。

宇宙を連想させるメロディやアルバムタイトル、ジャケットとは対照的に、歌詞については自分の近くで歌われているように感じられる。想像し難い冷たさや暑さの存在する遠い不思議な世界ではなく、地に足をつけている自分達の、日常とそのちょっと先にあるものの視点で丁寧に語られている。この傾向は後作以降でより進化し、バンドの方向性にも明確に反映されてきている。

 

この記事を書く前に、ふと気になって他の方のレビューやwikiを読んでいた。自分より遥かに深めていて読み応えがあったのはもちろんであるが、当時は知らなかった裏話などを知ることができて面白かった。聴きこんだ作品であるからこそ、新たな話を知ることが楽しい。

 

orbital period

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