ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

魂と光の叫びを聴け SPECIAL OTHERS「マイルストーン」

 

マイルストーン

マイルストーン

 

スペアザとボーカリストとのコラボアルバム「SPECIAL OTHERSⅡ」がリリースされた。優れたメロディに、力のあるボーカリストが重なって音楽を紡いだ前作「SPECIAL OTHERS」を更にレベルアップさせたということで期待が高まった。先行リリースされた、斉藤和義との「ザッチュノーザ」も良い完成度だった。

参加アーティストの世代も広めで、最近のバンドに追いつけていない自分には刺激的だった。在日ファンクはともかくフォーリミは聴いたことなかったから新鮮だった。

 

 

 ■今回だけ、異論は認めない。

9mmとバックホーンは青春だったと言っていいほど大好きで聴き込んだバンドなので、それだけで非常に熱いコラボでヤバかったです(語彙力低下)。

9mmは「The World E.P.」から聴いているため、いつの間にか頼もしいバンドになっていて親戚のおじさんの気持ち。

バックホーンは、御多分に洩れず(?)古いほうが好みだが、未だに新譜はチェックして時たま心にヒットするのでやはり隅に置いておくことはできない存在。曲の当たり外れは正直大きくなってしまったが、演奏のレベルが向上しているのは嬉しいことだ。

 

■距離の近さ?

歌われている言葉がこの二人らしいのも好印象。どっちのバンドの曲と言っても十分通用しそうだ。

 

歌詞もしかることながら、聴いていると、二人の声の判別ができない瞬間があった。こんなに長く聴いている2バンドであるにも関わらず、だ。

キャリアはバックホーンのほうが長いが、昔から対バンをしていることから距離の近さへの自覚はありそうだ。歌詞のどこか闇を抱えた世界観、演奏の重厚さ、声質に共通点を感じる。

「異色のコラボ」なんという代名詞はあるが、この二人は似た者同士のコラボだ。かえってそういうものは見かけない気がする。ましてや音源として発表されるのは…ありがたいことだ。

 

■静かなる闘志

とっても失礼なことを言うが、スペアザの演奏は9mmやバックホーンより上手い。それぞれのバンドが目指すものが違うためそういうことも野暮ではあるが。牽引力の強すぎるボーカル二人だが、スペアザとの演奏のバランスは絶妙だった。引っ張るという気迫が普段より大人しく、その分歌とアンサンブルへの意識が集中したことによって、バラード曲でもなかなか聴くことのできない静かなアツさが伝わって来た。

 

バックホーンに関しては、宇多田ヒカルのプロデュースで話題をかっさらった新曲「あなたが待っている」でも今回と同じ、歌への集中力が垣間見られた。昨年のツアー「月影のシンフォニー」と相待って、この一年は山田将司にとって音楽性の深みへの模索が一層進んだのだと思わせる。

 

■成熟期へと向けて

 思えば、最初期の9mmは流血ライヴで有名で、バックホーンは暗く重たい、死にたくなるバンドの代名詞だったのだが、どちらもキャリアを重ねて色々な意味で成長した。

昨年のライヴのMCで、山田将司が「先にも進まなきゃならないが、過去の曲も背負っていかなければならない」と語っていたのが印象的だった。背負うという表現が、自分達の生んだ曲の限界を悟っている重圧を表していて、切なくなった。

彼らは、再び苦しい時期に来ているのだろう。 同じ年代でも一抜けたバンドも見られ始めたなか、自分達はどう成熟していくべきか。葛藤も多いことだろうが、様々なものを取り込んでいく貪欲さが高まっている現状なら、最終的に良い方向へ進んでくれるだろう。