ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

地続きの音楽を示す スピッツ「1987→」

 

スピッツが結成30周年である。自分が生まれる前からはじまったバンドが未だに最前線で活躍している。心から祝福する。

 

 

■30年をつなぐ記念碑

近年の作品を振り返ると、ここまでのロックチューンは出ていなかったので新鮮である。そして、最初期のスピッツを知っている人であれば、とても懐かしい気持ちになるだろう。かく言う自分も懐かしくなった(デビュー当時は生まれていないが)。

単に昔の作風をなぞるだけでなく、サビではきちんとスピッツらしいメロディとキャッチ―な歌詞を奏でるのがなんともにくい演出である。

自分達の道のりを振り返りながら描かれた曲というのも珍しい。歩みを振り返りつつもいやらしさを感じさせない、謙虚な歌詞も非常に好印象だ。それでいながら感傷に浸ることを許さず、過去に甘んじる姿勢を一切見せていない。

 

最初期のスピッツを形容する言葉として用いられる「ビートパンク」を、見事に再提示した一曲である。

 

■バンドの生きざま

ヒーローを引き立てる役さ きっとザコキャラのまんまだろう

それは今も続いてる 泥にまみれても

美しすぎる君の ハートを汚してる

 

「ロビンソン」や「チェリー」などの、日本のポップ史にまで歴史を刻んだ名曲を生み出してきたにも関わらず、非常に謙虚な歌詞である。一方でタダでは決して転ばないという精神も垣間見える。そして、尋常ではない苦しい道のりだったことも。

 

スピッツの生き様はともすればのんびりしているように見える。シングル曲だけを聴いていると、やさしそうなイメージだ。

本当はロックンロールを徹底的に追求をしているが埋もれてしまっている(もしかしたら敢えて埋めているのかもしれない)。そんなイメージでこのベストアルバムを聴いた人は、3分にも満たないこの曲でぜひびっくりしていただきたい。実は今もこんなロックンロールを鳴らしてしまう力を秘めている怪物であるということを。

 

同年代のバンドと比較すると、90年代のヒット以降は華やかさに欠け、地味なイメージである。最近はインタビュー記事を読んでいないので分からないが、ヒットとその後のギャップに苦しんでいた時期があったことだろう。

しかし、歩みを止めることなくずっと進んできた。ポップスに媚び過ぎず、独りよがりにもなっていない。コツコツと音楽を続けてきた。ザコキャラと謙遜しているが、30年間ずっと聴き手のハートを汚してる。

 

 

スピッツは今後も、大きく変わらずに曲を作り、ライブをしていくと思っている。この節目にも媚び過ぎず、淡々とその道を歩んでいくと信じている。