RISOKYOでポップに遊ぶ「Awesome City Club BEST」
バンド名は知っていたけど、どこから入ればいいかなーと悩んでいたところにベスト盤がリリースされていた。軽い気持ちで聴いたら見事にハマった。
◾️絶妙なボーカルバランス
きっちりと歌い上げる、聴かせる箇所でのatagiのボーカル、曲のテンションを突き上げ、華やかさを増幅させる装置としてのPORINのボーカル。重くなり過ぎないようなサポートだけでなく、デュエットとして歌われる曲もあり、男女のツインボーカルの利点を様々に組み合わせているのが楽しい。必要以上のシャウトがなく、メロディと歌が見事にマッチする音楽はポップスをやる上で効果的だ。
この利点を爆発させてるのが「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」でのデュエットだ。野暮ったくなりがちなデュエットを、ストーリー性と煌びやかなサウンドに乗せて披露している。
(Awesome City Club OFFICIAL WEBSITEより引用)
しかしまぁオシャレなアー写だこと…。
◾️軽やかに、弾けるように
はっきり言って、バンドの技巧的な部分としては特筆するべきことはない。可もなく不可もなく。
その代わりと言っては何だが、シンセを存分に活用した華やかさが魅力的である。
華やかなサウンドは、バンドとしては敬遠されてしまうような分野である。それこそ数年前の4つ打ちブームの頃では取り入れられなかった、あるいは避けられていたであろう音作りだ。
昨今のシティポップの台頭にマッチングしたことも、盛り上がりを示せる要因になるだろう。けれど、彼らのサウンドはシティポップのそれよりも更にポップス寄りの次元にあると思う。
とことん追求したポップスだが、下手なロックバンドよりもロックバンドらしい。本人たちは全身全霊で曲を作っているだろうが、ストイック過ぎない音作りによって気持ちの余裕と、それを活かした遊び心が感じられる。
◾️自分たちのテーマをやり切った!!
「架空の街 Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップをRISOKYOからTOKYOに向けて発信する男女混成5人組。
コンセプトの強すぎるバンドは、(主観であるが)どこか寒かったり痛かったりするがAwesomeはそれを大きくは感じさせない。「演じる」というと言葉が悪いが、自分たちが定めた役割を果たしている。
今回のベスト盤はこれまでのコンセプトアルバムの総括として位置付けられている。収録されている新曲「ASAYAKE」を聴くと、きちんとやり切ったんだな!!と感動する。
次のステージを意識した『夜明けの歌 夜明けの歌 僕らだけの歌』というフレーズ。散文っぽくなった一方で韻を活かしてキャッチーさを出した歌詞。サウンドは音を減らして、洗練さを強調。ツインボーカルによる歌の伸びの良さをふんだんに使っている。「アウトサイダー」「涙の上海ナイト」など、面白い視点からの曲も良いが、王道をいくこの一曲に、実績と実力が詰まっている。
◾️街を飛び出して、どこへ行く?
彼らの音はまだRISOKYOにいるのか?それともTOKYOに着いたのか?今後はどこへ向かっていくのか?
そんな具合に、コンセプトをなぞりながら今後の行く道を見つめていきたい。