ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

邦楽ロックへの変化球 SPECIAL OTHERS「Good Morning」

 

「これをロックンロールに含めてもいいのか?」

初めて聴いたときの感想はそれだった。歌がなく、ド派手な演奏をするわけでもない。ボーカルがいないというだけで大人しく感じられた。

 

2回目に聴いた時、その頃にはクラシックをはじめた頃だったか、演奏の上手さと曲の展開の幅広さみ驚かされた。ロックとしてだけであればさほど響かなかったが、自分の音楽の幅を広げてからその良さに気付いた。

 

 

これまでもインストのロックバンドはいくつか出てきて、何度か聴いてきた。けれど、スペアザほど響くバンドにはこれまで出会っていない。

その差を挙げるとしたら、間奏もしくは中間部の展開にある。同じ音形の繰り返しで進行するのが曲としてバランスがとれるが、歌がないとメロディに変化をつけづらい。ここで断念する、あるいはパートのソロを入れてもイマイチ冴えないというのがインストをやるバンドに多い。

それに対してスペアザの場合、音形の繰り返しは定石通り行っているが、各パートのソロ回しが絶妙である。ジャズの表現に似通った説得力、アドリブ感で弾きこんでくる。

 

他人と一緒にいる環境でスペアザを流すと非常に評判が良い。自分のようにロックバンドの文脈、もしくはアンサンブルグループとして読み取るわけではなく、雰囲気の良い音楽として印象が良いのだろう。単なるBGMではなく、メロディだけでも聴けるポピュラーミュージックとして稀有な存在であることを裏付けているのではないだろうか。

 

アルバム「good morning」は1stフルアルバムとして2006年にリリースされた。私はリリース順をあまり意識せずに他のアルバムを聴いてきたため、バンドの成長などをあまり感じられなかった。今は完成度の違いは分かるようになってしまったが、初めて聴く分にはどの作品から聴いても全く問題はない。

1曲目「Aims」はロック寄りの激しめなナンバー。ライブでも特に踊れる一曲のようだ。受け入れられづらかったインストバンドとしてシーンに殴り込むための気迫を感じられる。キャッチーな主題と3拍子で進行する中間部のコントラストが絶妙だ。今聴くと、ソロはまだ発展途上だと感じられるが。主題に戻る際のソロの締め方がだいぶ雑なのが惜しいなーと思ってしまう…けれど、曲のポテンシャルは非常に高い。

2曲目「Good Morning」、1曲目と比較してのんびりとしたナンバー。ちょっとだけボーカルが入ったりもする。ポップなサウンドは冒険だっただろうが、スペアザの真髄の一つである明るさをよく表現している。

5曲目「Around the World」はジャズっぽさがある。ベースがとても良い感じで、ベースとボーカルだけになる部分はなかなかの聴かせどころで驚かされる。

9曲目「Khn」はファンキーさが際立つ。跳ねた感じの進行は作中でも存在感がある。好き放題弾くソロパートに対して、盤石なリズム隊に身体を思いっきり委ねることができ、非常に気持ち良い。破綻のないアンサンブルがよく分かる一曲だ。

 

独特の存在感を放つスペアザ。アコースティック編成での演奏もかなり良いそうだ。

 

3回目に聴いたときは、難しいことは考えず音楽に身を委ねた。