ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

COLDPLAY A HEAD FULL OF DREAMS TOUR at Tokyo(2017/4/19)

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14歳の頃から聴いていたイギリスのロックバンドが目の前に居る。極東の小さな島国で観れた。どれだけ幸せなことだろうか。

 

東京ドームに着くと外国人の姿が多く、成田空港の国際線ターミナルにでも迷いこんだかと思った。ビールとおつまみを買いこんでのんびりと開演を待つ姿は日本のライブ会場よりちょっと余裕があって素敵だった。

 

 

前座はRADWIMPS。この発表を聞いたときはただでさえ取りづらいチケットが余計取りづらくなると絶望したが、取れてしまえばこっちのもの、やはり中学生の頃から聴いていたロックバンドを生で聴けるので非常にお得な気分だった。

 

 

やはり「君の名は。」効果で、映画からの曲が盛り上がっていた。「人間開花」を予習せずに来たが、 古い曲も多めで一安心だった。

おしゃかしゃま」でのソロ回しでは、ツインドラムの変則的な編成(最近はそれが定番なのかな?)を存分に活かしたパフォーマンスが会場を圧倒。興味無さげであった観客をも釘付けにしていた。

演奏は40分弱で終了。「スパークル」「おしゃかしゃま」「DADA」と特に好きな曲を聴けたので十分満足だったが、「前前前世」がなかったのが予想外だった。物足りなさを感じた人もちらほら見かけた。

会場を白けさせるわけにはいかない、この大役を担える日本のバンドは他に浮かばない。キャリアと実力、近年の人気度を考えれば、なんだかんだ言いつつもこの人選は適切だったのだと感じた。

 

 20分ほどのインターバルの後、COLDPLAYの演奏がはじまる。気がつけば会場は満席。左を見るとChineseのカップル、右はヨーロッパ系の白人、目の前にはアメリカ系の大きなおっちゃん。アウェー感を感じる不思議な光景だった。

SEが終わり、世界的なツアーであることを示した映像が終わると、一曲目「ア・ヘッド・フル・オブ・ドリーム」が始まった。初めてやる場所であることを全く感じさせない、堂々と、そして伸びやかな演奏。舞い上がる紙吹雪と光り輝く会場、手元のザイロバンドが光り出し客席が一気に浮かび上がる。一体感と多幸感に包まれたショーへと一瞬のうちに引き込まれた。

手元のバンドが黄色に変わると、「イエロー」がはじまった。隣のChineseの二人がずっと熱唱していて、終始この調子だとちょっとしんどいかな…と苦笑いしつつも、個人的には元々それほど好きではなかったこの名曲を予想以上に楽しむことができた(ちなみに隣の二人はイエローが特別大好きなようで、その後は大熱唱することはなかった)。

 

MCを挟み、「ウォーターフォール~一粒の涙は滝のごとく」や「パラダイス」とアップテンポな曲が続いた後、「オールウェイズ・イン・マイ・ヘッド」や「マジック」など、彼らのキャリアの中でも特に暗い作品である「ゴースト・ストーリーズ」の収録曲を演奏した。華やかさがウリであるツアーのなかでもきちんと演奏されたことが嬉しかった。下手をすれば会場の雰囲気を急降下させてしまう曲であるが、丁寧な演奏と演出が功を奏し、違和感なく披露されていた。

 

ステージの場所を変えたピアノ弾き語りによる「エバーグロウ」、PVの世界観を映像と炎で彩った「ヒム・フォー・ザ・ウィークエンド」など、絶妙な緩急を付けつつライブは進行していった。特に「ヒム・フォー〜」での躍動感あるパフォーマンスは目に焼き付き、徐々にEDMへと変化していった意外性と一瞬にして会場をクラブへと変えたレーザーの演出にはノックアウトされてしまった。

 

「フィックス・ユー」で一旦落ち着いてから、「美しき生命」で会場が歓声とこの日一番の大合唱に包まれる。いつまでも続いて欲しい思いと喜びが冷めないまま続けて「アドベンチャー・オブ・ア・ライフタイム」に繋がった。カラフルな映像と響き渡るリフという演出の洪水に加え、クリスがコールアンドレスポンスを求め、ドーム全体にアルバムのジャケットの色彩が描かれたのような瞬間であった。

 

この後、非常に嬉しい出来事があった。

何曲か演奏した後、会場が一旦暗くなり、メンバーがはけていった直後、目の前にいたおっちゃんが英語で「あっちにステージがあるよ」と比較的すぐ先にある通路の端を指した。真っ暗で何も見えないが、背中を押されるまま端まで行ってみた。目が慣れてきた頃、10mほど先に機材があることを確認できた。それから間を置かずにメンバーが登場。図らずも目と鼻の先で観ることができたのである。本当は撮らないつもりだった写真も思わず撮ってしまった。ちょっとしたコンサート会場のような距離感で、「ティル・キングダム・カム」や新曲を含む3曲を演奏していった。

 

再びメインステージに戻り、近年の彼らのキラーチューンである「ア・スカイ・フル・オブ・スターズ」を披露。弾けるような笑顔で歌うクリスを中心に、会場の全てが星のように輝いた瞬間だった。

最後は「アップ・アンド・アップ」を丁寧に歌い上げ、ステージ上に国旗とフラッグを残して去っていった。

 

会場のスケール感に決して臆することのない演奏力と、エンターテイメント性を完璧にまで高めた演出。世界中をまわってきたことによって洗練されたであろうこの東京公演は、文句なしの名演であった。スケールの差に圧倒され、欠点を見つける余裕はなかった。そして、残りのヨーロッパツアーはさらなる高みへと到達すること(自分の頭では想像できない高さである!!)を予感させた。

 

 東京ドームを出たあと、誰かが「美しき生命」のコーラスを歌っているな、と聴いていた。しかしそれは水道橋の駅に向かう途中まで聞こえたことで、自分の空耳だと気付いた。全身に残る余韻が、どこまでも心地良かった。