チャットモンチー「サラバ青春」×大阪環状線103系
評論チックな文章が多かったけれど、今回は一人のロック好きとして、一人の鉄道好きとして心を揺さぶられたので書きなぐる。
大阪環状線改造プロジェクトで作られるPVやポスターはどれもセンスが良い。最初のPVも良いシンガーを起用するなと感心したものだ。
日本第二の都市を支える路線としては少し見劣りする…古臭くもある大阪環状線を良くしていこうという気概が感じられる。
103系の引退のニュースが入ったときは、さして驚かなかった。東京に引っ越してしまったが、必要最低限の記録は関西にいるうちに済ませてあり、慌てて行く必要はないかなーという感じだった。
チャットモンチー「サラバ青春」と言えば、いまの20代にとっては卒業ソングの定番の一つだろう。
同時に、最初期のチャットモンチーの最高傑作の一つだ。後年のようなトリッキーな要素こそないが、これでもかと(おそらく)高校時代の後悔を流し込んでくる。
きっといつの日か笑い話になるのかな
あの頃は青くさかったなんてね
余談だけど、作詞は高橋久美子だったんだね。今はチャットにいないのにタイアップされるってどういう気持ちなんだろう。
何でもない毎日が本当は
記念日だったって今頃気づいたんだ
毎日乗る電車は新しくて綺麗なほうがいい。例え自分みたいな酔狂な電車オタクであってもそうだ。
それでも古い電車というのは、やはり愛着が湧いてしまう。
帰りの電車では、「今日は古いほう当たっちゃったかーまぁいいか」という具合に、ちょっとガッカリするけど、気落ちするほどではない。少しだけ車内を見回して、タブレットや文庫本に目を落とす。そうやって楽しんできた。
もっとも、旅行とかで乗りたい電車があるときはこうは限らないけど。
大人になればお酒もぐいぐい飲めちゃうけれど
もう空は飛べなくなっちゃうの?
曲のなかでは、当時の彼女たち三人の抱えた不安までも伝わってくる。後悔は大きいが、でも自由も感じられる今この瞬間が永遠に失われていくという不安だ。
大人になっても、楽しいことはたくさんある。というのは持論だが、確かに、あの頃のような感覚は無くなったかな、と思う。
PVでは、103系から録った前面展望の映像が流れる。
車両が変わったからと言って、沿線そのものが変わるわけではない。もっと言ってしまえば、同じオレンジ色の車両はまだ走る予定だ。
もし、この映像から何かを感じるならば、その古い車両の空気を思い浮かべ、沿線を眺めることだろう。
例えて言うならば、引っ越しをした後の何もない部屋を見るときの気持ちだろうか。窓の外の景色は変わらないが、空っぽになった部屋に残る寂しさのようなものを僕は感じとれる。
PVでは景色だけでなく時間や天気が移り変わる。これだけあれば、きっと大阪環状線に乗ってる人みんなが少なくとも一つのシチュエーションに出会えているだろう。
数か所で出てくる、夕日が差しているシーンがとても好きだ。曲の雰囲気と絶妙にマッチしている。
何でもない毎日が本当は
記念日だったって今頃気づいたんだ 今頃気づいたんだ
冒頭に出てくる17,464日という「何でもない毎日」が、とても重さを感じられる。
普通に暮らしているなかに、それほど長い年月を支えてきた電車があるということを、自分のような鉄道好きではなく、楽曲とのコラボを通して多くの人に知ってもらうきっかけになって欲しいと願う。