ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

ポップへの登頂「Hymn for the weekend」,「Adventure of a Lifetime」 by COLDPLAY


本来ならばアルバム全体で紹介するべきだが、この二曲があまりにも好きなため、抜粋して紹介させていただく。

「Hymn for the weekend」、まずはタイトルが秀逸である。週末が待ち遠しいのは世界共通であることを思わず考えさせられた。
音楽としては、テンポが遅いため他の曲と比較するとちょっと分かりにくいが、近年の作品に見られるサビでの突き抜けるような盛り上がりが聞かれる。サビの作られ方、曲の進行とコーラスの入れ方、メロディの歌い回しは王道中の王道だが、ここにたどり着くまで長い期間を要していたためか、説得力と音の厚みが感じられる。
しかし、なんといってもこの曲の歌詞は強烈である。歌詞の衝撃の大きさであれば、宗教的要素を取り入れた意欲作であり、知名度としても以降の作品においてもバンドのターニングポイントとなった「Viva la Vida」にも近いのではないだろうか。
「A Sky Full Of Stars」「Every Teardrop Is A Waterfall」などの作品は、歌詞の世界観がやや抽象的である。一方、「Hymn~」でははっきりと一人称で書かれている。それだけでなく、具体的な場所を連想させる情景描写ということも強烈である。

「Advemture of a Lifetime」は直球のポップソング…と見せかけて、なかなかのくせ者である。歌詞に関してはいかにも彼ららしい、登場人物が少ないながらも全世界を相手にするスケール感を出している。
この曲は、なんといってもメロディのキャッチーさが最大の魅力である。もっとも、テンポが速いので鼻歌を歌うようなものではないが…。


対照的な二曲であるが、どちらもバンドのキャリアと、無敵のバンドへと大成した現在も先へと進もうとする意欲を体感できる作品である。そして、COLDPLAYの現在の立ち位置を実感できる。
語弊を恐れず言ってしまえば、ポップサウンド、ポップソングへの登頂を示す指標となっている。
現在の彼らは、これまでと比較して、コンセプトが明解である。アルバム単位の話になってしまうが、これまでの作品はその芸術性を追究することに重きを置いていた。そのために、「VIVA LA VIDA」や「GHOST STORIES」などの作品は非常に難解である。
この2曲を含め、「A Head of Full Dream」がたまたまポップな作品になった可能性も否定できないが、「マイロ・ザイロト」のサウンドでポップの可能性を提示したことを勘案すると、強く意識をしていたと考えられる。もちろん、その芸術性を追究した上での話なので、誤解なきように…。

俗っぽい表現になるが、誰にでも知られたロックはポップスであると言う人は多い。また個人的には、それはある程度事実であると思っている。ロックの頂上にあるとも言えるポップサウンドへ駆け上がっていくCOLDPLAYの今後がより期待できる二曲だ。

A Head Full of Dreams

A Head Full of Dreams

「orbital period」(BUMP OF CHICKEN)

中学生の頃にやっていたブログは、記事タイトルを曲名とし(これは今も続いている)、冒頭でその曲のレビューを書いていた。当時の友人たちからは賛否両論あったが、毎日更新していたこと、それだけ音楽を自分なりに解釈していたことは今思えば結構すごいと感じている。

 

大学四回生の終わりとなり、あと二ヶ月もすれば社会人となるタイミングでこれを作ろうと思ったのは、中学生の頃より語彙も聴いた音楽の数も増えた今、どれだけ音楽と向き合えるかを確かめてみたいと思ったからである。

 

 

 

最初に書いてみるのは、きのう結成20周年ライブを行ったBUMP OF CHICKENの「orbital period」である。それこそ中学生の頃に発表され、発売をとにかく楽しみにしていた作品である。後にも先にも新作を楽しみにした経験はこれっきりである。発売から8年が経ったが、今も定期的に聴き返すアルバムである。

 

1曲目の「voyager」から17曲目の「flyby」まで、歌詞、音楽ともに全曲を通して一連の物語が出来上がっている。バンプのアルバムでは他のバンドよりも物語性が捉えやすいと思っているが、前作「ユグドラシル」や後作「COSMONAUT」よりもまとまりが良い印象である。7曲目「ハンマーソングと痛みの塔」から10曲目「花の名」までは中弛みをしている感はあるが、弛緩しきっているわけではないのがこの作品の強みである。特に9曲目「かさぶたぶたぶ」のキャッチーでややコミカルなメロディと、可愛らしいだけではない歌詞が、気の抜けた耳に突き刺さってくる。前後作ではアルバム単位で聴くと飽きてしまうのと比較すると、その弛みもきちんと考慮されているように感じる。

2曲目「星の鳥」から6曲目「supernova」、11曲目「ひとりごと」から16曲目「涙のふるさと」までの緩急の付け方は絶妙である。きれいな山を描くグラフのように楽曲が続き、心の盛り上がりとヒートダウンまで気持ちよく体感できる。ためらいなく音楽を楽しめ、歌詞を聴いて深めることができる。

宇宙を連想させるメロディやアルバムタイトル、ジャケットとは対照的に、歌詞については自分の近くで歌われているように感じられる。想像し難い冷たさや暑さの存在する遠い不思議な世界ではなく、地に足をつけている自分達の、日常とそのちょっと先にあるものの視点で丁寧に語られている。この傾向は後作以降でより進化し、バンドの方向性にも明確に反映されてきている。

 

この記事を書く前に、ふと気になって他の方のレビューやwikiを読んでいた。自分より遥かに深めていて読み応えがあったのはもちろんであるが、当時は知らなかった裏話などを知ることができて面白かった。聴きこんだ作品であるからこそ、新たな話を知ることが楽しい。

 

orbital period

orbital period