ロキノン爺の逆襲

音楽のことをつらつらと。主にアルバム、曲のレビュー

怒らないからアジカンの「N.G.S」をナンバガの曲と早とちりした人は手を挙げなさい NUMBER GIRL「SAPPUKEI」

‎ナンバーガールの「SAPPUKEI 15th Anniversary Edition」をApple Musicで

今年のR.S.Rのポスター、

見間違いかと思ったよね。誰かがイタズラで書いたのがそのままアップされたのかと。

でもアカウントできてるし、

NUMBER GIRL、再結成。向井秀徳「またヤツらとナンバーガールを」 (2019/02/15) 邦楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

コメントまで出ている。このコメントがあまりにも信頼性が高くてとりあえず信じることにした。金と酒が書かれていたのなら信じるしかないよね。

Twitterのアカウント取得日が2018年4月とからしいけど、これはエイプリルフールでも狙っていたのか、それともどこかのタイミングで密かに狙っていたのか。

何年か前のギターマガジンで向井秀徳田渕ひさ子が対談しているのを見たときは本当にびっくりした。

 

とりあえず金貯めなきゃ。タイムマシンを買うより遥かに安いんだ。

誰のものでもない音楽

人生で初めて聴いたナンバーガールのアルバムが「SAPPUKEI」。確か2008年で、とっくに解散していた。古いレイルマガジンを読んでいたら、連載を持ってたくるり岸田氏がこれを取り上げていた記憶がある。これ読んでナンバガ聴きはじめた鉄オタキッズは流石にいないと思うがどうなんだろう。

変な、とても変なバンドだと思った。一曲目から置いていかれた。カウントが「論客用無し」ってなんなんだよ。

意味は全く分からなかった。しかし耳から離れない。断トツで耳に残ったのはギターのカッティング。00年代後半の邦楽ロックに傾倒していた自分には、ギターは軽やか、爽やかな音というイメージしかなかった。キャッチャーさが無い、音像が濁っているこの音は何なんだ。次は歌詞。意味不明。何を表現しているか分からない。強い言葉や学校の授業でしか聞かないような単語が並び、カオスな光景が頭の中で広がっていく。

俺は3号線を狂う目から可笑しいに向かって北上。

(URBAN GUITAR SAYONARA)

とりあえず、ここで福岡のバンドってことはわかった。

答えを一切示さない歌詞もインパクトがあった。

俺を弁護するヤツがいない

その自尊心との戦いは

いつまで続く?

(SAPPUKEI)

禅問答ばかりの歌詞は、耳障りの良いポップスばかり聴いていた人間には全くやさしくない。

 

よく言われていることで恐縮だが、他のバンドと全く異なっていたのは、ひたすら自分のことを表現していたことだ。それも恋愛とか家族とかではなく、ただひたすら自分の心情、出来事を語っている。別に答えはないし、有り体に言えば誰得なもののはずだ。それでも支持されたことは、もしかしたら期間限定な恋だの愛だのよりも、おはようからおやすみまで付いて回る心情が表現される方が(嫌な言い方になるけど)需要があったということだろう。

 

冷凍都市とは

アルバム内でナンバーガールの気持ち悪さと音楽のカリスマ的センス、詩人としての向井秀徳を示してくれたのは、8曲目「U-REI」だった。

全パートが掻き鳴らすノイジーなイントロから、変拍子的に刻んでくるギターは、アルバム内でも存在感が際立っている。

部分赤。出た!この赫…全くもって赤い

赤しか言っていない、それ故にこべり付く印象。東京のこととかをどうやら歌ってるらしい。

この曲もカオスな感じで突き進むと思われたところで、状況が一変する。

憂ってる 街にとまって

目立ってる 赫い夕暮れ

気取ってる りりしい顔で

憂ってる 街にとまって

突如、叙情的な歌詞がはじまり、断片的な情報しかなかったものが、ここで一本の線となる。

東京の印象、生き抜くための意地、ふとした瞬間に心を抜ける風、これらが歌い上げられる。

今も言い続けている冷凍都市という言葉の源流はこの曲にあると思う。野暮だから解説は避ける。面白いのは、各々で印象が違うし、そもそも皆が上京するわけではないのに、冷凍都市という単語で同じようなものをイメージできることだ。共通認識をうまく活かした表現である。

Number Girl Syndrome

邦ロックバンド、ナンバーガールの影響を受けない方が難しい件 | NIGHTCAP

言いたいことはこの記事に書いてあるんだけど、このアルバムと「サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態」を聴いてから、当時の邦ロックが全部ナンバーガールのパクリに聴こえる病気にかかった。当時の面々を思い出すと、影響受けてないバンドなんて皆無だったから。

ただし、個人的にはこれを感じたのはサウンド面が大多数である。ここまでストイックに内面を掘り下げるバンドはなかなか多くない。

また未来が読めなくなった!!

2010年代前半に入るとエルレの影響を受けたバンドがたくさん出てきて、最近はそれもひと段落して新鮮な音がたくさん出てきたように個人的には思う。骨太なロックはシーンでは聴けないからちょっと探さなきゃいけないけど。

しかし、そのトレンドを作った張本人たちが帰ってきたからさぁ大変。これを期に聴いたロック少年達がどんな音を作り出すようになるか。アラサー世代好みの音楽が5年後ぐらいにリバイバルするかもしれない。

 

福岡市博多区ではじまり、サッポロで終わったバンドが、石狩で蘇る。これだけで最強のストーリーだ。それでも未だに信じられない。真偽を確かめるにはやはり現場に立ち会うしかない。